漢方薬局 東京、目黒区中目黒、桂林堂薬局、漢方薬局の日常から

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掌蹠膿疱症の説明と、漢方薬的考え方
自己免疫疾患を考えて

掌蹠膿疱症の起こり方
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足の裏に小さな水疱や膿を持つ膿疱(皮膚に膿(うみ)が溜まった状態)が生じるとともに、皮膚の赤みや、皮が厚くなる角質増殖を伴う皮膚病で、水虫に似ていますが膿疱内の膿からは細菌は検出されないため、病院の検査は、真菌検査や細菌検査を行います。
水虫と違って膿からは細菌は検出されないため、掌蹠膿疱症は他の人にうつることはありません。

長い間、良くなったり悪くなったりを繰り返し、痒みがあることが多く、骨や関節の痛みなどを伴うこともあります。

現在、西洋医学的には原因ははっきりとは判っておりませんが、説として以下の3つがあげられています。
扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、歯槽膿漏、虫歯等の疾患に多くみられるため、その原因となる菌(溶連菌など)による生体反応。
② 歯を金属(例えばニッケル合金)等で治療している場合、金属アレルギーによるもの。
③タバコの吸い過ぎ等による咽頭炎喉頭炎によるもの。

現代医学での治療法は
副腎皮質ホルモン剤含有軟膏やビタミンD3軟膏を用い、症状が非常に強く、外用で効果が出にくい場合や、前述の関節炎を合併した場合は内服治療でレチノイド(ビタミンA類似物質)を使います。
ただ、レチノイドは妊婦や妊娠の可能性がある方には使えません。
へんとう腺や虫歯の細菌感染が疑われた場合には抗生物質内服やへんとう摘出、歯科治療も行われるようです。
ステロイド等の長期使用は副作用をもたらす場合が多く、漢方薬での治療を進めるケースも増えています。



掌蹠膿疱症に対する漢方的考え方

漢方医薬学的には、掌蹠膿疱症は、自己免疫疾患のひとつだろうと考えられています。自己免疫疾患とは、身体の中の免疫システムが、何らかの原因により、自己と非自己の区別がつかなくなり、正常な細胞や組織を、本来は身体を守るべき免疫細胞が攻撃して、さまざまな症状が引き起こされる疾患のことをいいます。代表的な病気としては、バセドウ病(グレーヴス病)や、全身性エリテマトーデス(SLE)などが知られています。

免疫が異常なのは、漢方でいうところの「腎」が弱っているのが、原因だと考えられています。この腎が弱ってちゃんと働かない状態を「腎虚」といい、そして、腎虚を治す方法を「補腎」といいます。補腎の方法には、さまざまな方法がありますが、ここでは、掌蹠膿疱症に限って考えてみたいと思います。

五臓のうちの“腎”は、今日の腎臓の働きも含みますが、もっと広い範囲の生理機能も含まれ、その範囲は今日の泌尿生殖器系・脳下垂体−副腎を中心とするホルモン系・免疫系など、生命の基底を支える生理機能に相当し、さらに骨・骨髄を養うとしています。
腎”の強化を“補腎”といい、用いられる処方を“補腎薬”といいます。
補腎薬には有名な腎陽虚・陰虚の八味地黄丸・六味地黄丸・知麦地黄丸などがあります。

次に、手掌や足蹠(手のひら、足の裏)を含む皮膚は、皮膚呼吸をしていることもあり、五臓のうちの“肺”臓腑系の一部ととらえられ、鼻・のど・気管・気管支・肺胞、そして皮膚・毛孔が“肺”を構成する器官と考えています。

漢方医学の観点から考えてみると治療法は、“腎”を補強し、“肺”の働きを強め、局所の熱感や炎症を冷ます方法が考えられます。⇒清熱解毒
また、食生活ではビタミンH(ビオチン)の不足も、原因の一つとしてあげられ、ビオチンは内臓では肝・腎、トマト・ニンジン・卵黄に多く含まれ、腸管内で合成されるとされます。

ビオチンの欠乏症は、皮膚炎・舌乳頭の萎縮などが起こり、ビオチンを服用することで改善がみられることもありますが、外部からの投与だけでは対症療法であることは否めず、よい効果のあがる人は多くはありません。根本治療ではないからです。ステロイド療法が失敗するのも、外部からの投与によるもので、やはり根本を治していないからです。

まとめ
掌蹠膿疱症の漢方治療として、“腎と肺”を強化に、胃腸など消化器系が虚弱である場合は、その強化に努め、また、柴胡桂枝乾姜湯・柴胡桂枝湯・柴胡清肝湯等の柴胡剤も免疫調整に優れ、ぜひ利用したいものです。
柴胡剤の併用もかんがえるべきです。