、脾臓を考える、日本人に多いタイプ脾虚 (体力低下・食欲不振・疲れやすいなど)

漢方薬局の日常から
皆さまの中に、陰陽五行論という、中国で2.300年前に完成された医学理論をご存じないでしょうか。
脾は、現在医学に当てはめると胃腸に当てはまります。
漢方医学が考える脾の主な働きを紹介します。

「脾は運化(うんか)を主る」いわゆる、大まかには、消化器官内で起こる消化・吸収のことです。

飲食物を消化・吸収させると言った現代医学の消化器系とよく似た働きを持ちます。
脾の運化機能が低下すると、食欲がなくなったり、食後に腹部膨満感が現れやすくなります。→脾虚 (体力低下・食欲不振・疲れやすいなど)
飲食物を意味する水穀(すいこく)の水の運化が低下すれば、便が柔らかくなり軟便や下痢になります。これも脾虚です。 

また、女性に多いのですが、便秘に間違いやすい症状で排便時最初便がかたく、かたい便が出た後、軟便や下痢になるものもあります。
これも、脾の機能が低下した「脾気虚(ひききょ)」の症状です。

「脾は気血生化(きけつせいか)の源」

飲食物がうまく消化吸収されなければ、エネルギー不足で疲れやすく、無気力になります。
脾は血も生むので、貧血のときはとにかく食べないといけません。→現代医学でも、胃壁が損傷すると鉄分吸収が低下し、鉄欠乏症貧血になるといわれています。
その食べ方も、脾を傷めないよう、冷たいものや生ものは控えるようにします。脾臓は陽虚(冷え)を嫌います。

生野菜なんか身体に良さそうですが、実は身体に余分な水分をため込んでしまいます。
この余分な水は、中医学では「湿(しつ)」と呼ばれ、「脾は湿を悪む」といって、脾に湿がたまると、脾(胃腸)の機能は低下してしまいます。
また、、「脾は湿を悪む」ということは、気候の湿気も嫌うことになり、湿気の多い6.7月に、胃腸の調子が悪くというのはこの理屈から説明できます。


「脾は肌肉(きにく)と四肢(しし)を主る」という理屈

手足がだるく力が入らないのは脾の機能が低下しているためです。
手や足を長く上にあげておくことができないなど、重力に逆らえないのです。
内臓も同じで重力に逆らえないと、胃下垂、子宮脱、脱肛、遊走腎になったり、頻繁に便意をもよおしたりします。
これは、最重要!「中気下陥(ちゅうきげかん)」といって、「脾は昇清(しょうせい)を主る」機能が低下したために起こる症状です。

「昇清」とは脾で得た精微物質(栄養やエネルギー)を上部に行きわたらせるという意味もあります。
ですから、身体の上部である頭部に精微物質が行きわたらないとめまいが生じることもあります。
このように、脾は飲食物を身体に必要な物質やエネルギーに換える機能を持つことがわかると思います。


「脾は統血(とうけつ)を主る」という理屈

これは、血管から血液が漏れ出るのを防いでいるという、血管内の血液の統制を意味します。

脾の統血作用が低下することを「脾不統血(ひふとうけつ)」といい、血便・血尿・皮下出血・崩漏(ほうろう:不正性器出血あるいは生理が1週間以上ダラダラ続く)などの症状
が出ます。
生命を維持するエネルギーを「精(せい)」といいますが、親から受け継いだ「先天の精」とそれを維持していくのに飲食物から得られる「後天の精」があります。

先天の精は腎に貯えられていて、限りがあるものです。それを補うのが後天の精です。ですから後天の精
を補うには脾を健全に保つことが大切です。無理なダイエットや暴飲暴食は慎みましょ

以上、なかなか理解しにくい東洋医学の理論ですが、2000年後の現代にも当てはまる部分が多く、今でも通用していることに驚かされます。

ちなみに、この理論、陰陽五行論をもとに占いの四柱推命も完成されています。